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睡眠時無呼吸症候群は歯科で改善できる?意外なマウスピース治療の可能性

皆様、こんにちは。私は歯科医師として、日々患者様の口腔内の健康維持に努めております。歯科というと、虫歯や歯周病の治療、あるいは審美的な改善をイメージされる方が多いかもしれません。しかし、近年、歯科医療が果たすべき役割として、全身疾患との関連性が強く認識されるようになってきました。その代表的な疾患の一つが、「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」です。

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まる、あるいは浅くなる状態が繰り返される病気であり、その原因のほとんどが、上気道が閉塞する「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)」です。いびきがひどい、日中の強い眠気、集中力の低下といった症状を自覚される方もいらっしゃいますが、ご自身では気づかず、ご家族に指摘されて初めて判明することも少なくありません。放置すると、高血圧、糖尿病、心筋梗塞、脳卒中といった生活習慣病や循環器疾患のリスクを高めるだけでなく、交通事故のリスクも上昇させることが知られています。

では、なぜ歯科医師が睡眠時無呼吸症候群に関わるのでしょうか。それは、OSASの多くが、口腔や顎顔面領域の構造的な問題に起因しているからです。具体的には、舌の根元が落ち込む、扁桃腺が大きい、軟口蓋が長い、下顎が小さい、あるいは後退しているといった状態が、睡眠中に気道を狭め、閉塞を引き起こす原因となります。

歯科では、このようなOSASの患者様に対して、内科医や耳鼻咽喉科医と連携しながら、歯科的なアプローチによる治療法を提供しています。その中心となるのが、「口腔内装置(マウスピース)」を用いた治療です。この装置は、睡眠中に下顎を前方に突き出すように、あるいは舌が後方に落ち込むのを防ぐように設計されており、気道の閉塞を防ぎ、呼吸をスムーズにする効果があります。CPAP(持続陽圧呼吸療法)が主な治療法となる重症例や、外科手術が適応となるケースもありますが、軽度から中等度のOSAS、あるいはCPAPの装着が困難な患者様にとって、口腔内装置は非常に有効な選択肢となります。

口腔内装置の作製にあたっては、まず患者様の口腔内の状態を詳細に診査します。歯並び、噛み合わせ、顎関節の状態、舌の大きさや位置などを評価し、個々の患者様に最適な装置を設計します。歯科医師は、歯型を採取し、患者様の顎の動きや呼吸時の気道の変化を考慮しながら、精密な装置を作製します。定期的な調整も重要であり、患者様の症状の改善度合いや口腔内の変化に合わせて、装置を微調整していくことで、より高い治療効果を目指します。

また、小児においても睡眠時無呼吸症候群は増加傾向にあり、成長期の口腔機能発達不全が関連している場合があります。アデノイドや扁桃肥大に加え、低位舌や口呼吸、軟口蓋の形態異常などが原因となることも少なくありません。小児のOSASは、学力低下や多動、成長発育への影響も懸念されるため、早期の発見と適切な介入が求められます。歯科矯正治療によって、顎の適切な成長を促し、歯列を整えることで、気道の確保に寄与できるケースもあります。

睡眠時無呼吸症候群の診断は、専門医による睡眠ポリグラフ検査などが必要ですが、いびきや日中の眠気など、気になる症状がある方は、ぜひ一度、かかりつけの歯科医院にご相談ください。私たちは、口腔内の専門家として、患者様のお口の状態からOSASのリスクを評価し、必要に応じて医科の専門医への受診を促すとともに、歯科的な治療を通じて皆様のより良い睡眠、ひいては全身の健康維持に貢献できることを願っております。

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