院長インタビュー

患者さんの体の負担は最小に、得られるメリットは最大に

清澄白河駅A2出口を出て通り沿いを右に20メートルほど進んだところに「にしざわ歯科クリニック」はある。入り口には植木植物が置かれ初診でも入りやすい雰囲気だ。この周辺でもっとも大きい通りの一つである清澄通り沿いにある医院は、戸建ての一軒家風の作りで、採光もたっぷり。白を基調にした院内は、無駄なものが一切なくシンプルながらも居心地のよい雰囲気である。「患者さんがゆったりと過ごせるよう、ユニット回りは広めにスペースをとりました」と話してくれたのは、西沢浩昭院長。背が高く、がっちりとした体躯のためなんとも頼もしく見える。「こういう風貌のためか、強面(こわもて)に見られることが多くて」と、照れ笑いながらに頭をかく西沢院長のユニフォームの胸には、愛らしいクマのキャラクターがにっこり微笑んでいる。見かけに反して、茶目っ気たっぷりのドクターなのだ。しかし、治療中は時間を忘れてしまうほどに治療にのめりこんでしまう一面も。そんな西沢院長の魅力を、記事を通してたっぷりお届けしたい。
(ドクターズファイル取材日2014年1月28日)

―明るく、清潔感のある院内ですね。

ありがとうございます。当院はもともと歯科医院の跡地だったところを利用して開院したのですが、その際に壁はもちろん柱や床、天井など、可能なかぎりの箇所を白で統一しました。やはり清潔感がありますし、院内がぱっと明るくなりますので。また、私は黄色が好きなので、歯科ユニットやちょっとした小物には黄色を用いています。今でこそ、明るい色のユニットは珍しくありませんが、2005年の開院当初はブラウンや紺色など濃い目の色のユニットが流行っていた時代でした。ですが、どうしても気に入った色にしたくて。今では、患者さんからの評判もよく、この内装でよかったと思っています。

―診療において気をつけていることを教えてください。

治療手技や知識の向上のための努力はもちろんですが、最新機器はなるべく導入する方針でやっています。以前と比べ歯科で用いられる機器類は格段の進歩を遂げていますが、中でも拡大鏡はその最たるものです。最高で8倍の視野が得られるため、拡大鏡を用いるだけで、以前は充分な視界が得られず難しかった歯の根っこの治療の精度もかなりレベルアップしました。またそれだけ細かい箇所がクリアに見えるようになると、当然より多い光量が必要になりますから、ライトもそろえる必要が出てきます。機材の買い替えはそれなりの費用がかかるのですが、それ以上に患者さんが得られるメリットが大きいと思います。ですから、必要であればできるだけ最新機器をそろえていきたいと思っています。

―他にはどのような機材を導入されていますか。

低線量のCTを入れています。最近では、CTを導入している施設も増えてきましたが、まだまだ多くはありませんね。でも、インプラントなどの治療を行う上でCTは欠かせない存在です。CT画像があれば、主要な血管や神経の走行まで事前に診断できるため、手術中に不測の事態に陥ることがほとんどなくなりました。一方、従来のCTには通常のX線撮影と比較して被ばく量が多いという問題点がありました。当院で導入しているCTはX線量を抑えることで被ばく量を従来の24分の1にまで減少させています。これにより患者さんは、体の負担はより少なく、メリットはより多く享受できるようになっています。

―どのような子ども時代を過ごしましたか。

私は池袋で生まれ育ちました。今でこそ池袋と言うと大きな都市というイメージがありますが、当時は高層ビルも少なくどちらかと言えば自然の多い環境でした。そんな中で育ったこともあり、私はやんちゃばかりしている少年だったように思います。中学時代はバスケットボール、高校時代は陸上、大学時代はテニスとスポーツばかりしていて、思えばあまりじっとしていることは少なかったですね(笑)。

―歯科医師をめざしたきっかけを教えてください。

私の父は産婦人科と内科の医師で、実家で医院を開業していました。幼い頃からずっと、家に帰ると診察している父の背中と患者さんを目にするような生活をしていましたね。一方姉は、私が中学生の頃に歯学部に通っていました。家で課題などを行っているのを見ては、なんだか楽しそうと思っていましたね。常に医療が身近にある環境で育っていたので、気づけば自然と「自分もいつか人の役に立てる仕事がしたいな」と思っていましたね。

―先生にとって、お父様はどのような存在ですか。

子どもの頃は、頼れる存在である反面怖いと思うこともありました。最近はだいぶ丸くなりましたが、やはり昭和一桁の生まれですから、現代の医師と比べると、患者さんに対しても少し威圧感のようなものがあったのではないかと思うのです。昔は父のそんな姿に違和感を持ったりしていたのですが、自分も医師になってみて、改めて父が患者さんのことを深く考えているということがわかりました。父はいまも現役なのですが、私の心の師でもあります。怖いと思いながらも、やはり父に対する憧れや尊敬の気持ちがあったので、医療の道に進んだのだと思います。特別意識しているわけではないのですが、最近は父に似てきたなと感じることも多いですね。

―予防医療にも力を入れているそうですね。

はい、そうです。歯科衛生士を中心に、「虫歯や歯周病にならない環境作り」を行っています。歯科衛生士の仕事の中でも大切なのは、患者さんのモチベーションを上げることです。どんなにクリーニングが上手な衛生士であっても、患者さんのやる気を出させることができなかったら意味がないのではないでしょうか。その点、当院の衛生士は、患者さんとのコミュニケーションを何より大切にしています。しっかりと話を聞き、患者さんの気持ちに合わせて治療を提案します。また患者さんも、治療上私に言いにくいことでも衛生士には話しやすいこともあるため、そういった意味で私と患者さんの橋渡し役にもなってくれています。

―治療上のエピソードで一番印象深いものは何ですか。

先程昼休み中に、「先生、今開いている?」と予約なしで来てくれた患者さんがいます。その方はもう10年以上通ってきてくれており、今では歯に関することなら何でも相談してくれるような、たいへん親密な仲になりました。しかし、来院当初は当然ながら、「この歯科医師はどんな考えなんだろう、どんな治療をするんだろう」と不安なお気持ちもあったと思います。それを解きほぐしてくれたのが、歯科衛生士の存在だったのです。私が治療に集中するあまり、患者さんに長時間同じ姿勢を強いてしまうことがあったのですが、そんなとき歯科衛生士が私の気持ちを代弁するように、「先生は、少しでも治療の精度を上げようとして一切手抜きせずやっているので、たまに時間を忘れてしまうことがあるんですよ」と伝えてくれたりして。私自身が忘れていることをフォローしてくれたおかげで、患者さんと徐々に信頼関係が築けてきたと思っています。

―開院14年目を過ぎて、治療に対するスタンスに変化はありましたか。

思えば開院当初は、技巧にばかり走るというか、治療に対する理想ばかりを追いかけすぎていたように思います。しかし当然ながら、患者さんにはさまざまな事情があります。治療が必要だとわかっていても、子育てで忙しくてできなかったり、仕事が忙しくて時間が取れなかったりします。そんな中で、それぞれの事情に合わせて柔軟に治療を提案するような心の余裕が生まれました。あとは、とにかく話を聞くようになりましたね。特に初診の患者さんは、何か聞いてほしいことが必ずあるのです。最初は話せなくても、話を聞いているうちに本当に気になっていることを話してくれるようになります。それまでは、こちらから口を挟まないようにして、耳を傾けるよう心がけています。今後も患者さんの心の声を聞ける歯科医師でありたいですね。